なぜ私たちは海洋プラスチックを「素材」として扱うのか
2019年、石垣島で見た景色から
2019年の夏、家族旅行で石垣島を訪れました。
子どもたちに、沖縄の豊かで独特な自然や文化、そして飛び切り美しい海を見せたい。そんな思いで選んだ旅でした。
家族との時間の合間に、私はサーフィンをするため、地元のサーフガイドにお願いして、観光客はほとんど来ない小さな海岸へ連れて行ってもらいました。
そこは幅20メートうほどの岩場のような海岸でした。
そこから海に入り、サンゴや岩盤にぶつかってキレイに割れる波に乗る。
海底のサンゴに棲む熱帯魚だちが透き通って見え、クリスタルのような波を楽しむことができました。
本当にきれいな海でした。
ところが、サーフィンを終えて車へ戻る途中、道の脇に積み上げられた大量のプラスチックごみが目に入りました。
おそらく、地元の人たちやサーファーが海岸から拾い、運んできたものでした。
わずか20メートルほどしかない小さな海岸に、これほど多くのプラスチックごみが漂着するのか。
その光景を見た瞬間に、身体の中に衝撃が走りました。
それまで子どもたちに見せていた「きれいな海」は、自然のままきれいだったわけではありません。
地元の人たちが拾い、守り続けてくれていた海だった。
そのことを突きつけられた瞬間でした。

2019年11月、石垣島出張時に撮影
観光客が訪れる海岸はきれいに見えていても、少し人の手が届きにくい場所へ行けば、そこには大量の海洋プラスチックが漂着し、堆積している。
石垣島への家族旅行は、私にとって海洋ごみの現実を知る大きなきっかけになりました。
海洋プラスチックを「ごみ」で終わらせないために
海洋プラスチックは、海で暮らす生き物たちを脅かしています。
そして、海で起きている問題は、決して海の中だけで完結するものではありません。
海の生態系や食物連鎖の変化は、地域の暮らしや産業を通じて、私たち人間の生活にもつながっています。
一方で、私たちは毎日の暮らしの中で、便利さや快適さを求めています。
プラスチックも、そうした豊かな生活を支えてきた大切な素材の一つです。
だから、単純に「プラスチックを使わなけれないい」と言いたいわけではありません。
私たちが向き合いたいのは、
使ったプラスチックがその後どこへ行くのか。
そして、すでに海へ流れ出てしまったものをどうするのか。
ということです。
近年、さまざまな「再生素材」や「生分解性素材」が使われるようになりました。
それ自体は、とても大切な変化だと思います。
一方で、「再生材」「生分解性」といった言葉だけで安心してしまうと、
その素材がどこから来たのか、どの様な環境で分解されるのか、使った後にどう扱うべきなのか、といった本質的な部分が見えにくくなることもあります。
どこで回収されたのか。
誰が回収したのか。
どれくらいの量が回収されたのか。
そして、そのうちどれくらいが製品に使われているのか。
海洋プラスチックの問題に向き合うのであれば、私たちは、こうした素材の由来と流れが見えることも大切だと考えています。
「ごみ」ではなく、「素材」として社会へ戻す
海洋ごみを拾うことは、とても大切です。
ただ、拾ったものを再び廃棄物として処理するだけでは、その流れはそこで終わってしまいます。
もし、海から回収されたプラスチックを再生し、もう一度、社会の中で使われる素材にすることができたら。
回収する人。
素材へ戻す人。
製品をつくる人。
その製品を選び、使う人。
それぞれがつながれば、環境活動だけでなく、経済活動としても続いていく可能性が生まれます。
私たちは、そのつながりを一本のTHREAD=糸として考えています。
そして、その糸には、海で回収する人、素材へ戻す人、製品をつくる人、使う人、それぞれの物語が紡がれていきます。
海洋プラスチックを「ごみ」で終わらせず、再び社会で使われる「素材」へ。
そして、海から回収された資源が、人や地域、企業をつなぎながら社会の中を循環していく流れを紡いでいく。
それがOCEAN THREAD®という名前に込めている想いです。
そして、海から回収された資源が、人や地域、企業をつなぎながら社会の中を循環していく流れを紡いでいく。
それが、OCEAN THREAD®という名前に込めている想いです。
海をもっと好きになり、大切にできる未来へ
そもそも、私は海が大好きです。
生き物が好きで、人も自然の一部として、共に豊かに暮らしていける未来をつくりたいと思っています。
OCEAN THREADに関心を持ってくださる地域や企業の皆さんとも、
単に「環境に配慮した製品」をつくるだけではなく、
その活動や製品をきっかけに、海や自然をもっと好きになる人を増やしていきたい。
海洋プラスチックを回収する。
再生素材として社会へ戻す。
製品として使ってもらう。
そして、その製品を手にした誰かが、海について少し考える。
そんな小さなつながりを、一つずつ紡いでいきたいと思っています。
次回は、実際に海洋プラスチックを再生素材として循環させようとしたときに見えてきた、現場ならではの難しさについて書きたいと思います。